■Magazine 2004/01/11 毎日新聞「Weekly くりくり」
 

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記事内容

〜声はミントブルー=`
「なんくるないさ〜」東京に来て13年、いつもこの言葉を自分に向け、夢のために頑張ってきた。
この空もあの青い沖縄の空につながっている。離れているから故郷への愛情を実感する。
私は、どこへいてもうちなんちゅう≠ネんだなぁ。

〜栄養になる音楽を〜
琉球王朝の血を受け継ぐ家に生まれた。3歳のころからテレビで流れる歌謡曲を聴いては、
家で歌マネや振りマネをしていたが外では引っ込み思案人見知り。
心配した祖父母が度胸をつけさせようと勧めた、のど自慢コンテストだったが、いつしか沖縄中の
大会を制覇!小学2年生からは、プロの歌い手として仕事を始めるようになった。
「この人みたいになりたいとあこがれる前に、お客さんが喜ぶには何をしたらいいんだろう、
早く自分が聴く人にとってあこがれの存在にならなくては、という気持ちが強かったですね」

CDの売り上げやヒットを中心に置く音楽業界はサイクルが早い。しかし普天間かおりの音楽は、
それとは最も遠い場所にある。スローミュージック・スローライフ≠ェテーマ。
「一曲の音楽がその人にとって一生流れるものとなるし、その曲によって落ち込んでいる時に
励まされたりすることもある。 音楽は目に見えないけれど、確実に人を支える力を持っていると
信じているんです。だからもっと素直に音楽を楽しんだり、心の友になるような音楽を探して
みようよ。ひとりひとりの中に歌というものとの会話があって、その人の栄養になるような音楽を、
じっくりゆっくり、自分自身も体感しながらやれたらいいなぁと思っているんです」
普天間さんの作る曲は、三線や琉球音階が使われていない。
「無視するわけでもなく意識するわけでもなく沖縄音楽ブームの後、だんだん定着してきた今、
私が沖縄のものに対して軽はずみにやって商業的になってしまうのは好ましくない。
もっともっと自然でいいかなと思うんですよね、沖縄を愛している私のどこを切っても
沖縄の景色が見える。それで十分かなって」

センセーショナルで刺激の強い言葉が求められることも多いが
「私は得意じゃない。なんてことのないありふれた言葉で伝えられるものがあると思う」
歌で伝えたいのは、沖縄の島が持つオーラー、あったかい気候や景色の中で育った人たちの
心の部分。「聴いてくれた人の心にずっと残る歌を歌いたい。そのためには、音楽に対して
真摯で思っていたいし、歌を愛していきたい。おばあちゃんになっても気持ちは同じで歌って
いられたら・・・・・・というのがずっとずっと先の夢です」
好きな言葉は、ぬちぐすい。歌や耳ぐすい、笑(わら)て腹(わた)ぐすいといういい方がある。
沖縄のミントブルーの海のように澄んだ美しい歌声と、てぃだ(太陽)のような明るい笑顔は、
まさに命の薬。ぬちぐすい。

記事・神島夕子 撮影・後藤啓太